2014年1月30日

伝わらない外来語(4) ~ クレーマー、ソフト面、パワハラ


Harassment in the workplace.

今回の外来語は最近、翻訳や通訳の際に英訳に困った表現について書きました。。クレーマー、ソフト面、パワハラ。

クレーマー


苦情ばかり言っている人のことを日本では「あの人はクレーマーだ」と言うようですね。英語表記だと、claimerになるのでしょうか?でもこういう使い方をするのは日本だけなので、英語でそういうことを言いたいときは、表現を変えなければなりません。

辞書でclaimを調べると、


  1. (当然のこととして)要求する
  2. (矛盾や異議があっても自身をもって)主張する
  3. (物事が)(人の注意などを)引く;(注意・尊敬などに)値する


というような意味と出ていて、私もそのように認識していました。1.は自分の権利、遺産、紛失物を「要求する」、2.は自分の意見を「主張する」、3.は人の業績などが尊敬などに「値する」、という意味になっています。

これらがとういう経緯で「文句をいう」という意味になったかは定かではありません。


映画「クレーマー、クレーマー」が関係有るのかな、とふと思いました。離婚した両親が親権(custody) を裁判で争うという内容ですが、映画の場合、英語表記は Kramer vs. Kramer (クレーマー対クレーマー)で、Kramerというのは元夫婦の苗字です。関係ないと思いたいです。

さて、「苦情が多い人」という意味の「クレーマー」を英語で表現したい場合はどうすればいいでしょう?日本語で「文句ばかり言っている人」という意味の単語が無いように、英語にもありません。

消費者が会社などに、「苦情をいう」ことを英語で file a complaint といいます。

      I filed a complaint at the furniture store that my bookcase had been damaged when it was delivered.
      家具屋さんに、配達された本棚が破損していたという苦情を出した。

「苦情が多い」はcomplains too much と言うことができます。「文句が多い」と同じ意味です。

      To be honest, the waitresses think Ms. Landers complains too much.
      正直いうと、ウェイトレスたちはランダーさんは苦情が多すぎると思っています。

ソフト面、ハード面

とある会社の海外向けPR資料の英訳をした時に「ソフト面、ハード面」という言葉が出てきました。なんとなく聞いたことがありましたが、翻訳する必要があるまで、あまり意味を考えたこともありませんでした。

しかし、営業の方が使うための資料ですし、「ソフト面、ハード面」が何を指しているのか説明するために貴重な時間を割く必要が出てくる可能性もあります。

もともとはコンピュータのハードウェア、ソフトウェアから来ていることは想像できます。形があるものがハードで、ないものがソフト、だということなのでしょう。インフラのソフト面、ハード面という風に日本では幅広く使われています。すごく独創的な使い方だと思いますが、やはりこれではまだ英語では通用しません。

ソフト面、ハード面は業種によって違ってきます。英語で表現する時にはそれをリストアップすることをおすすめします。私は依頼主に電話をかけて、ソフトとハードについて問い合わせて見ました。ソフト面は、従業員のトレーニング、業務のマニュアルづくり、など。そして、ハード面は新しい機器の導入、古い建物の整備のようなことでした。その中の主要なものを3つずつ選んでいただいて、英文にリストアップしました。

とても便利な言葉ですが、具体性に欠けているので、英語では使わない方がいいです。Soft elements and hard elements などと訳している方もいらっしゃいますが、これで伝わるとは思えません。大切なことは表現を変えてでも、わかりやすく説明することだと思います。

関連記事: 発見!「ソフト面」、「ハード面」を英語で表現する方法

パワハラ


外来語が伝わるときに最初に導入された言葉が基準になって後から来た言葉はそれの変形になるということを私は「スイートポテト現象」と呼んでいます。

日本には最初に伝わったのはいわゆる「さつまいも」ですでも普通は「(お)いも」と呼ばれています。その後に伝来した馬鈴薯は普通「じゃがいも」と呼ばれるようになりました。

逆に欧米では馬鈴薯が最初なので、potato と呼ばれ、後から来た「いも」は sweet potato と呼ばれています。

「パワハラ」もそんな言葉の一つだと思っています。

まず、日本の社会では「セクシャル・ハラスメント」(性的嫌がらせ)という言葉が先に広まったような気がします。セクハラと略されていて、日常会話でよく使われています。

その後、職場での性的ではない嫌がらせなどを表現するために「パワーハラスメント」が生まれたのでしょう。でもそれは和製英語です。

職場などでの嫌がらせはすべて、harassment なのです。Power という言葉は必要ありません。立場が強い方(パワーを持っている人)が弱い方に嫌がらせをする harassment には色々なタイプがあります。

職場で性的な嫌がらせにより権利を侵害することを sexual harassment といいます。男性が sexual harassment の被害者になりえますし、加害者が同性の場合もあります。性的なharassmentは特に卑劣だとされています。他にもracial discrimination(人種差別)、religious harassment(宗教的嫌がらせ)などがあります。

英語で「パワハラ」について語る場合は power の部分は省略しましょう。

      Paul is suffering from harassment by his supervisor.
      ポールは上司によるパワハラで苦しんでいる。

Photo source: What Is Considered Harassment?(興味深い記事です)


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